法律系の講義に限らずであると思いますが、大学の講義では過去の事例や理論について
説明を加え、皆さんが教科書を読んで理解しているところと擦り合わせさせることにより
従前の知的成果と皆さんをつなげる作業をします。いわゆる座学、皆さんにとって聞くだ
けの、面白くないところですね。
教科書を読めば理解できること、言い換えれば「枯れた知識(枯れた技術と同じ意)」
の習得が面白くないことは、講義を担当する教員も重々知っていることですから、講義の
合間に最新の情報なり、最近の動向なりを加えて、皆さんを飽きさせない工夫をしたり
します。
今日は、この最新・最近の動向を知る方法について、以下に紹介しておきます。
その日の講義がつまらなかったり、消化不良で悶々としたりする場合は、自発的に活用
して欲しいと思います。
※ここでは法律系に特化して整理しておきます(後日、他の系統も追記するかも!?)。
まず実務・学説の動向を知るという意味で、次の2つを紹介します。
法曹時報(法曹會)
自治研究(第一法規)
『法曹時報』には最高裁判所の裁判例のうち、最高裁判例集(民集・刑集)に掲載された
ものについて「最高裁判所判例解説」としてその要約が掲載されるので、長々と判決文を
自分で読む手間を省いたり、要点だけ知りたかったりするときに有用です。ちなみに、
裁判例を確認したい場合は最高裁判所ホームページに開設されている裁判例情報・裁判例
検索が便利です。
『自治研究』は学者や実務家が執筆した行政学や地方自治行財政にかかわる論文等を収録
するもので、その時々の傾向なり意識なりを見て取れるので、地方自治研究や公法研究で
活用されることはもちろんですが、深部の論理や表に出ない裏話なり、本音なりを知った
りでき、面白いです。ちなみに、地方自治や行政法関係の講義で、講義に出席しなかった
分の埋め合わせ・救済措置がどうしても欲しいと求める学生に、どの論説でもよいので
A4一枚の要約をするか、A4一枚の批判的検討を含むレポートを作成するかを提示したこと
があります。
次に、定番の雑誌として、次の3つを紹介します。
判例タイムズ(判例タイムズ社)
法律時報(日本評論社)
別冊ジュリスト(有斐閣)
『判例タイムズ』は日本全国の民事裁判、刑事裁判、労働裁判、行政裁判など全ての最新
の動向を厳選して紹介するもので、判例実務誌を自負するのも納得の業界誌です。一方、
『法律時報』は法律学にかかわる問題を扱う業界誌で、各回でテーマを決めて編集してい
るので、(虎の巻かもしれませんが)論文のテーマ設定に悩んだり、関心のあるテーマの
最近の動向を把握したい時だったりに有用です。
『別冊ジュリスト』は、いわゆる判例百選シリーズ。講義で紹介する有名な裁判例・判例
は必ずと言ってよいほど掲載されています。分野別に編集されているので、法律系の講義
を履修する場合に、その分野の判例百選を手元に用意できるならば用意しておくと非常に
便利です。
最後に、学会誌として1つ紹介します。
公法研究(有斐閣)
『公法研究』は日本公法学会の機関誌で、1949年から発刊する老舗中の老舗。
以上、今回は6つほど最新・最近の動向を知るための文献を紹介しました。実は、
法律系の資格試験であったり、公務員試験やその昇進試験であったりにおいて、今回
紹介した文献は意外と役立ちます。なぜなら、その職業、職種に就く人間であったら
知っていて当然、と思われることが少なくないからです。
最初から読みこなすことは、誰もできません。最初は表紙を眺めるだけでも良いので
図書館で手に取ってみましょう!
Comments