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Daisuke Mitarai

言葉のキャッチボールは全ての基本です

更新日:2月27日

 そろそろ単位認定試験すなわち期末試験の週に突入するのではないでしょうか。

 例年のことですが、この週に突入する前後や突入してから、慌てて試験範囲を質問したり、成績評価の仕方を確認したり、成績評価の基準が厳しすぎると泣きついたりという風物詩に遭遇します。実は、昨晩から今朝にかけてもありました。タイムリーな内容でしたので、皆さんにも共有したいと思います。

 要点を先に示しておくと、3点あります。第1に、メール・手紙を送るマナーを習得していない点です。第2に、相手のメール・手紙を読んでいるようで自己中心的な展開に終始している点です。そして第3に、授業を受けたふりとなっていることを自覚していない点です。それぞれを確認してみましょう。


1.メール・手紙のマナーについて

 メールや手紙のマナーとして、誰に伝えようとしているのかをハッキリさせるために相手の名前を明示し、同時に自分が誰であるのかをハッキリさせることは最低限のことであると私は考えているのですが、唐突に送られてきた次のメールから、以上の2点を読みとれるでしょうか。

夜分遅くに失礼します。明日のテストの事なんですけど、前回の問題の中から期末テストが出るって言ってたと思うんですけど、前回の問題用紙が無くていただく事可能でしょうか?

 補足しておくと、国語力も高校を卒業した程度なのかと疑義が出そうです。書き直してみると、次のようになるでしょうか。

御手洗 先生
 夜分遅くに失礼しますことを御容赦ください。先生の授業を履修しております尚美太郎です。
 明日のテストについて、お願いしたいことができましたのでメールした次第です。
 先日の授業の中で、先生は前回の問題の中から期末テストが出るとおっしゃっていたと記憶しています。今更ながらの御願いで恐縮ですが、前回の問題用紙を失くしてしまっていることに気づきました。前回の問題用紙をいただくことはできますでしょうか。
尚美太郎 1月22日

2.言葉のやり取りについて

 言葉のやり取りとは、形だけの受け答えではありません。相手が自分に伝えたいことを理解し、それを実践しながら今度は自分が相手に伝えたいことを返すという一連の動作を繰り返すことを言います。そのため、返答において謝罪の言葉があっても、それが軽く受け止められてしまうときは、言葉のやり取りが成立していない可能性が高いです。

 以上の点を意識して次のメールのやり取りを読んでみましょう。

尚美太郎 様
 こんばんは、御手洗です。
 残部は処分しましたので残っていません。
そのためお渡しすることは不可能です。
 なお、私の、学生向けに提示してあるメールアドレスは
【b.】ではなく、【s.】です。修正をお願いいたします。
 取り急ぎ
御手洗 1月〇〇日

 補足しておくと、本学において学生に割り当てられているメールアドレスは、(学籍番号)@b.shobi-u.ac.jpですが、教員に割り当てられているメールアドレスは、(任意)@s.shobi-u.ac.jpです。

 メールの尚美太郎君は、再び【b.】に送り付けながら、次のように返信しました。

すみません。間違えた方に送ってしまいました。テスト範囲はどの範囲でしたでしょうか?

 この時点で、授業に出席していてもノートを取っていないことが、そうでなかったとしても何らの記録を残す作業を自分でしていなかったことを自白していますね。ちなみに、本学ではLMSをつうじて授業教材を配信したり、授業録画を共有したりしています。そして、この尚美太郎君が受講している科目は、そのいずれも行なっているものでした。したがって、本人がLMSを参照すれば確認できることを忘れていると推定できます。


3.授業を受けたふりについて

 時間内に教室に入って、出席カードを機械にかざして出席記録をすれば授業を受けたことになると勘違いする学生が例年、若干名いらっしゃいます。

 ここまでのメールのやり取りから、尚美太郎君がその一人であることは間違いありません。教室にいさえすれば、授業を受けていることになるわけではありません。授業内で取り上げられる論点・議論を聞き、その論理を自分の中で考え消化するまでやって、はじめて授業を受けていると言えます。もちろん、毎回消化までできないかもしれません。その場合は消化できなかった部分をノートに記録するなり、教科書などの該当箇所にマーカーを引くなりして、後日再度考えられるようにしておくまでできれば、授業を受けていると言えるでしょう。

 したがって、尚美太郎君は、受講生に求められている目標をまったく達成していないと言わざるを得ません。


 成績評価をおこなう場合において、この尚美太郎君が総合評価の段階まで残っているときは、以上の次第ですから「伸びしろがある」と認めることはできません。そもそも授業に参加しておらず、基礎学力の定着そして向上に努めようとしていないと評価せざるを得ないからです。


 総合評価の段階になるまでに尚美太郎君の単位が認定できることを祈っています。

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