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Daisuke Mitarai

調べるということ

 大学の講義を担当し、受講生から質問を受ける場合やこちらから

質問して回答を得る場合に「とりあえず調べました。」的な回答を

もらうことが正直多いです。一方、休日や空き時間をつかって実施

している対社会人のインタビューや市場調査の中で新社会人を含む

新人・新米に対する評価をうかがう場合に「調べてないんだよね」

的な回答をもらうことも多いです。実は、両者の根っこは同じ問題

を抱えていたりします。


*****

 最近はGoogle博士に質問すれば、それらしい答えをネット上から

拾ってきてくれます。ガリ勉くんやガリ勉さん(死語?)が友人に

いれば、傾向と対策的な答えを教えてくれますし、2コマ同じ授業

が続いている場合には、前のコマの受講生からLINE等のSNS

を通じて情報を仕入れて対策することだって簡単にできます。が、

教員の側も<傾向と対策>に日々取り組んでいますから回答を聞き

ながら、学生名簿で✓(減点)をいれていたりします。減点の理由

は、「とりあえず調べました」的な回答だからです。


 予習-授業-復習という基本的なサイクルを守って講義に臨んで

いれば、回答のレベルに差はあっても「とりあえず調べました」的

な答えにはなりません。なぜなら、このサイクルを守ってやってい

れば<調べる>ことが十分にできるようになっているためです。

 ここにいう「十分にできる」というのは、必要以上の情報を含む

答えでなく、質問に対する回答として適当な(テキトーな、ではあ

りません)情報を含む答えのことを言います。


 ちなみに、受講生からの回答に対してダメ出しをし、ムッとして

「努力して調べたので評価してください!」とか、「何がダメなの

ですか?」とかと反応する自分がいるとしたら、それは<とりあえ

ずこなすことによって充実している自分がいる>と思いましょう。

この自分は頭で考えていない自分(=保育園~小学生低学年)です。

調べる時に質よりも量を求め、調べ上げた情報量をみて大切な事が

たくさんありすぎて整理できない、なんて満足しているだけです。


*****

 頭で考える自分がいたら、どうなるのでしょうか?


 量よりも質を求める場合多くの場合大切なことは少ない筈です。

量よりも質という意味自体がそういう意味だと思いませんか? そ

して、そこで頭の中で行なわれていることは、あれかこれかという

情報の取捨選択です。この取捨選択を繰り返していくと、より根本

の部分の答えに近づいていく筈で、人によってはこのプロセスを

実感し楽しくなるかもしれません。そして、実は前述した予習-授

業-復習のサイクルは<調べる>ことを手助けしてくれます。


 予習は、全体を眺める効果をもたらします。言ってみれば登山で

頂上に上る複数のルートやチェックポイントを確認する作業です。

授業は、自分が把握していなかったルートやチェックポイントを

発見したり収集したりする効果があります。そして、復習では情報

の取捨選択とより根本の部分の答えすなわち頂上へ登り切るルート

の特定という効果があります。


 実際に達成するためには(文章として)書き上げることによって

実感できることになるでしょう。実際に目にするわけですからね。

しかし1日24時間、1週7日間しかありません。睡眠時間を減ら

したりお友達とのおしゃべりを減らしたりしたら可能かもしれませ

ん。そして、ガリ勉くんやガリ勉さんなら書き上げてしまうことで

しょう(笑)。とはいえ、私は一人ひとり全員がガリ勉くんやガリ勉

さんになる必要はないと感じています。


 睡眠不足はいい仕事の敵だ by ポルコ

 先の話になるかもしれませんが、試験前の徹勉(徹夜の勉強)も

やめましょう。暗記したキーワードを書き込むだけの試験=頭を使

わない試験ならば、大丈夫かもしれませんが、少なくとも私の出題

する試験では通用しません。睡眠不足はミス連発の導火線です。


*****

 では、どうすれば良いのでしょうか?


 古典的な方法は「頂上へ登り切るルートを記録しておけば、いつ

でも書ける(例えば1時間で800字程度書ける)」という状態に

したノートを書き上げておくことです。「いつでも書ける」見込み

がつけば書き上げてしまう必要はまったくありません。むしろそれ

は時間の無駄だとさえ実感する筈です。実は、私が担当する講義の

多くで<概念地図・マインドマップ>を多用して展開する理由も、

同じです。


 ノートを書く・書き上げる、またはノートに書き留めるというこ

とは、自分のやっている・やってきたことを忘れないため・必要な

時に思い出させるためです。スマートフォンなどのIT機器が普及

している現在では、紙媒体のノートでなくアプリで書き留める方法

も可能になっています。とはいえ、大事なことは「自分が使いこな

せる方法かどうか」です。一人ひとりに向き不向きがありますから、

自分に合った方法を、是非求め続けてください。


*****

 さて、今回は「調べるということ」というタイトルで、皆さんに

効率の良い調べ方の要点をお話しすると同時に、大学の講義の受講

に向けた対策的なお話をしました。最後に、今回の要点を図式的に

示して終わりにしたいと思います。


 ・調べる・・・「予習」で目標やキーワードを見つけて検索する

   ↓

 ・調べて・・・「あれかこれか」と情報を取捨選択し大事な事だ

        けに整理する

   ↓

 ・調べた・・・一応の「答え」をいつでも言えるように概念地図

        にしておく

   ↓

 ・授業or実践

   ↓

 ・復習or反省会:概念地図の補充や再度<調べる>に戻る。

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