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Daisuke Mitarai

高卒で就職するか、大学に進学するか

 今回は学内向けというよりは、高校卒業を控えて自分の進路問題と向き合う高校生を主な対象として書いてみたいと思います。なお、在校生については、今回のコラムを読んで、大学生活を自分がどのように過ごすべきかを考えるキッカケにしてもらえればと思います。


 さて、2023年9月に東洋経済×ICTのサイトに、インパクトの強い記事が掲載されました。その記事によれば、Fラン大学に進学すると高校を卒業して就職した場合と比べて1000万円の損をするというのです( https://toyokeizai.net/articles/-/696486 参照)。

 この記事によれば、大学無償化制度が導入される等の就学支援制度を背景に、Fラン大学は生き残ろうとしている的な話のほか、評定平均値が3.5未満の生徒がその学力のままで入れる大学に進んだとしても高卒で就職した人に比べて良い就職に必ず巡り合うとは言えない的な話、大学へ進学するのが当たり前になっている的な話が述べられた後に、「希望する誰もが進学できることはすばらしいことだ。だが本当に実現すべきなのは、進学してもしなくても、誰もがきちんと働いて暮らしていけることではないだろうか。」と結んでいます。


 おそらくですが、上記の話はその逆もまた真なりであると私は思いました。

 高卒で就職する場合でも、大卒で就職する人に比べて良い就職に必ず巡り合うとは限りません。また、就学支援制度を背景にしないで地域貢献なり建学の精神に則った大学経営を進めている大学もあります。そして、大学へ進学するのが当たり前になっているのであれば、私個人としては9割以上が大学へ進学する感覚ですけれども、普通科で7割、職業学科で3割程度ですから、大学へ進学するのが当たり前の雰囲気があるとも言えない気がします。


 ちなみに、上記の記事では放棄所得(大学に進学することで失う、高卒で働いた場合に得られたはずの所得の意味らしい)を取り戻せる大学進学かを考えよと主張されています。


 なるほど、この主張は、「高卒で就職するか、(それとも)大学に進学するか」という進路問題を解決する(=納得した選択をする)ために、1つの合理的な判断基準であると思います。


 なぜか。大学へ進学すると、高卒で就職する人と比べて少なくとも4年間は遅れて社会人をスタートすることになることは紛れもない事実だからです。これが大学院へ進学することになれば、さらに社会人としてスタートするのが遅れることになります。そのため、放棄所得を取り戻す可能性は大学へ進学すれば低くなるし、大学院へ進学すれば更に低くなるという予想は想像しやすいし、分かりやすい。


 確かに良い就職というのが年収・給料のことであると考えるならば、この「1000万円の放棄所得を取り戻せないという思い」は、さらに強いものになるでしょう。しかしながら、例えばそれが「あなたにとって『後悔しない』4年間になるかどうか」という判断基準で考えるとどうでしょうか?


 なぜか。それは 「友人が大学へ進学するから、自分も進学したい。」「自分が何をしたいか分からないから、それを見つけに行きたい。」「高校まで勉強した気がしないから、そのやり直しをしたい。」など、これらの気持ちも本学に入学した1年生から私が聞いたことのある言葉だからです。そのため、良い就職というのは後悔しない就職先・職場を選ぶことと私は受け止めています。


 これらの言葉の背景には、高校を卒業する時点で何らかの物足りなさを覚えている人だからこその気持ちがあると私は考えます。そしてFラン大学になればなるほど、これらの言葉を発する大学生の数が多くなることも事実ですが、それが悪い傾向であると私は思いません。なぜならば、受け入れた大学側が、彼・彼女らに後悔しない4年間を提供する空間を用意してあげれば良いだけのことだからです。


 もちろん、名前が知られている大学、評定平均値が3.5以上の学生が進学する大学が、後悔しない4年間を提供する空間を用意できないというわけでもありません。むしろ、それらの大学では、自然と後悔しない大学生活を過ごすだけの環境が長年蓄積されているからです。いわば既成の枠組みが存在しており、その既成の枠組みにフィットする=マッチする人はそこへ進学していけば、まず後悔しないでしょう。


 言い換えれば、Fラン大学に、そんな既成の枠組みが存在しない。それが、Fラン大学の魅力です。既成の枠組みが存在しておらず、自分がやりたいと思ったことを実現しやすい環境があるのがFラン大学です。既成の枠組みが存在する大学の中では自分のやりたいと思ったことを実現しようとする場合、かなりのエネルギーを費やす必要がありますし、一定程度の既得権益層も存在するので成功しにくいものですが、そんなものがないFラン大学だからこそ、自分がちょっと背伸びをして頑張れば実現してしまうことが多いです。


 以上の次第ですから、高校生の皆さんには時間が許す限り多くの大学を訪問してそれぞれの大学の雰囲気を感じ、その中で大学へ進学するかどうかを考えて欲しいですし、在校生の皆さんには自分がやりたいと思ったことを実現しやすい環境があるのだから一歩踏み出す勇気をもって話をしに来て欲しいです。


 最後に、皆さんにエールを送ります

  • 大学へ進学すると決めた人は、9月中旬以降、様々な形式の入試が始まります。自分の思いを出し切ってください。

  • 高卒で就職すると決めた人は、自分が納得できる職場を探し出して、社会人としての自分の目標を作り始めてください。


 いずれの途(みち)も、誰かが決めてくれるものではなく、あなた自身が決めるものですから。

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